現代地方譚カテゴリー: 現代地方譚10

現代地方譚10

「アート」を端緒に、まちの魅力と課題を探ります。

今、このまちでは図書館などをはじめとする公共施設の刷新をはじめ、次世代に向けた様々な取り組みが進められる一方、昔からの建物は老朽化に、昔から暮らす住民は高齢化に直面し、これまで通りの生活の維持が次第に困難になりつつあります。見慣れた街並みは、今後数年でさらに変わっていくことでしょう。街並みや景観はそのまちの価値であり、記憶であり、アイデンティティです。新しさや便利さ、合理性だけを追い求めていては、地域の魅力は損なわれてしまいかねません。このまちでどのように暮らしを営み、何を、どのように次世代へ伝えていくのか?毎年日本の各地から渡り鳥のようにやって来るアーティストたちの視点をよりどころに、これからの、このまちのありかたを語り合う場となる展覧会を目指しています。

「鳥観と微視」

「なんちゃあない」いつからかそんな言葉が当たり前になっていた。

現代地方譚。

アーティストは1年の限られた時間を須崎で滞在する。
ある者は歩き、ある者は溶け込み、
ある者は語らい、ある者は歌う。
彼らが見た・感じた須崎は、
アートとなってこの世に誕生する。

「なんちゃあないことはない」のだと、
作品は雄弁に語ってくれる。
そして思い思いに須崎を表現した彼らは、
彼らの日常に戻っていく。
また来るかもしれないしもう来ないかもしれない、
それはまるで、渡り鳥のように。

渡り鳥は知っている。
海の蒼さも、山の碧さも、日々繰り返される生業も、
癖の強いイントネーションも、
舌を焼く鍋焼きラーメンも。
それは自分たちの日常の外に在るもので、
全くもって刺激的なのだ。

渡り鳥たちは、思い思いに須崎を見ている。
嬉々として見入っている。
それは遥か上空から眼下を眺めるように。
考えもつかない角度から。
それは鼻先に熟れる果実を啄ばむように。
思いもよらない距離感で。

想像もできない視座の片鱗に触れたとき、
あなたもきっと気がつく。
目の前の当たり前は、誰かの特別なのかもしれない。
という事実に。
「なんちゃあない」ことはない、
「須崎には在る」のだということに。

(すさき芸術のまちづくり実行委員会)

アーティスト・イン・レジデンス須崎(滞在作家による成果発表展示)

アーティストの視点を手掛かりに、物語を紡ぐように《いま》の地域の在りようを皆で語り合い、将来を想像しようという趣旨で始まったアーティスト・イン・レジデンス須崎」。2014年のスタート以来、現代美術を中心にさまざまなジャンルのアーティストが須崎に滞在してリサーチを行い、作品制作と発表を行ってきました。2018年以降は美術の垣根も越え、音楽家や演劇人を招いた制作発表にも取り組んでいます。2022年初秋から今冬にかけて須崎を訪れたのは写真家、劇作家、音楽家として、それぞれが主軸となる活動で実績を蓄えながら、その領域を超えた活動の幅を見せる3人のアーティストたち。各人が各様に捉えた「須崎」が提示されます。

阪上 洋光

 

前年に引き続き現代地方譚に参加する阪上さんは、好評だった企画「占いの館」を今年もオープンします。彼の占いを受けたある女性は、須崎から1度出てみることを決意し、現在大阪にいるそうです。また、ある女性は「自分がルールだ」と言われたことで、責任のある役職につく決意をするなど、阪上さんの占いは悩める人々の背中を押してくれました。そのことについて阪上さん自身は「占いって怖いですねぇー」と言い、笑うのですが、本人とってもこの須崎滞在はコロナ禍以来、休止状態のままだった劇団の活動を再開し、新たな歩みを進めるきっかけとなりました。
「咲きたい種として須崎へ行ってその場所(土)でどんな風に育つか――未知なる自分への出会いを楽しみにしている。」と語る阪上さんは1月6日に文化会館ホワイエで公演を行います。是非ご覧ください