現代地方譚カテゴリー: 現代地方譚8

現代地方譚8

第8回となる今期のテーマは「おちこちのひびき」。感染症という予期せぬ事態で往来が閉ざされた今年を思索と実験の機会とし、これまで聴けなかった様々な声・音に耳を傾けてみる。

“遠い所と近い所”、“あちらこちら”、“将来と現在”、”昔と今“そんな意味を持つ「おちこち」からの響きを集め、捉え、それらの調律を試みます。

「おちこちのひびき」

全世界が共通の危機に直面して一年。腐り切って沈殿していた様々な問題をも浮かび上がらせたウイルスは数字と化し天気予報の様に生活に溶け込みました。ある側面だけからみると、我々人類の歴史は問題と共存するために自由を手放し、持続可能な社会を追求してきたとも言えるかもしれません。今回人類はまた自由を手放すかもしれないし、自由を得るかもしれない。はたまた何事もなかったかのように表面的な収束に向かうだけかもしれません。確実に言えることは現実には映画の様なオープニングやエンドロールはなく、何をもって収束か何が正義かを判断できる人はまだ誰もいないということです。

そもそも問題は皆、自分自身の内側に元からあったのかもしれません。それが外に飛び出し目の前に広がった時には、取り返しのつかない大きな問題になっていて、未知な物に対して学ではなく我の方が勝り、憶測が飛び交う。大前提として現状はまだ「わからない」ことの方が多いはずなのに、まだわかりませんが…と、思考を繰り返し更新している人の発言は固執する憶測の中に埋没し空気感はゆらいでいく。

「わからない」からこそ、やれる範囲の実験を繰り返すしかない、無理せず、ゴトゴト。

「わからない」からこそ、耳を傾け、ミクロもマクロも一度受け入れてみる。

普段耳を傾けないあんな人やこんな人に傾けるのもいいかもしれません。

聞いた後、耳を塞ぐ事がその人にとっていいのかも、はたまた、違う深海に耳をかたむけるのも…。

実験、実験。調律、調律。

今年の現代地方譚テーマは、おちこちのひびき。

遠い所と近い所。あちらこちら。将来と現在。昔と今。そんな意味を持つおちこち、の響きを、「わからない」からこそ、現在地から聞く所から始められたらと思っています。

内藤裕敬

現代的演劇の基礎を土台として、常に現代を俯瞰した作品には定評があり、劇団外での作・演出も多数。世界的ピアニスト・仲道郁代氏とのコラボ企画は20年に渡り全国で展開。2005年『調教師』黒木メイサ他、2008年『4×4』倉科カナ他、2014年『ハルナガニ』薬師丸ひろ子他、2016年『魔術』中山美穂他、演出の手腕を買われ、テレビで活躍する女優の最初の演劇作品を演出する機会も多い。
2015年より母校でもある大阪芸術大学芸術学部舞台芸術学科教授に就任し、特別公演の演出を担当。咲くやこの花高校やピッコロ演劇学校講師を務めるなど、後進の指導も積極的に行っている。
第2回テアトロ・イン・キャビン戯曲賞、第3回OMS戯曲賞、第7回読売演劇大賞・優秀演出家賞、文化庁芸術祭・優秀賞など、受賞歴多数。

佐々瞬

【展覧会歴】
・個展
2017 “あなたに話したいことがある”, Gallery TURNAROUND, 仙台
2016 “うたが聞こえてくる暮らし(旅先と指先)”, ARTZONE, 京都
2015 “とある発掘とリポート、その準備”, 黄金町エリアマネジメントセンター Site-Aギャラリー, 神奈川
2015 “とある日のこと(箱を受け取る)”, Alainistheonlyone, 東京
2014 “彼らとの対話(仮)” blanClass, 神奈川
2013 “催眠術/話の行方”, HIGURE 17-15 cas, 東京
2011 “それについての話,それらの行方”, blanClass, 神奈川
2009 “それについて”,TAKE NINAGAWA,東京
2007 “All as other”, Gallery K, 東京
2006 “Undulation”, BankART, 神奈川

 

・グループ展
2019 “AVAT x GalleryTurnaround國際交流展_宮城藝術的奇異點” 福利社, 台北
2016 “六本木クロッシング2016”, 森美術館, 東京
2014 “アラフドアートアニュアル2014”, 土湯,福島
2013 “Omnilogue: Your Voice is Mine”, シンガポール国立大学美術館, シンガポール
2012 “大邱フォトビエンナーレ2012”, 大邱芸術発展所, 韓国
2012 “MOTアニュアル2012”, 東京都現代美術館, 東京
2010 “東京造形大学絵画棟クロージング展「camaboco」”, 東京造形大学, 東京
2009 “ドピカーン観音寺2009”, 観音寺 香川
2009 “ZOKEI展”, 東京造形大学, 東京
2008 “日本コラージュ”, Gallery K, 東京
2007 “街と美術展”, キラクカン, 香川
2006 “タマニカイ4”, 霊下道場, 宮城

 

・パフォーマンス
2019 “ある家の行方” blanClass 神奈川
2018 中里広太展「見たい!聴きたい!覗きたい!」出演 Gallery TURNAROUND, 仙台
2015 “それら について話すこと”, blanClass, 神奈川
2014 “彼らとの対話(仮)” blanClass, 神奈川
2013 “今から共有する場所と時間の有効な使い方への投票/あるパフォーマンスについての
投票/20の選択肢”, blanClass, 神奈川
2012 “恋人のための催眠術/戦争経験について書かれた手記(ケー坊の半生記)”,blanClass, 神奈川
2012 “それらの日々をへて、あの日がやってくる”, blanClass, 神奈川
2012 “ある時間、彼らの話”, blanClass(新・港村), 神奈川

工藤夏海

描く。今までに見たり聞いたり触ったり作ったりしてきたことが身体に蓄積している。それはどんな人にもあてはまることだ。手が必要なものを知っているから、頭が邪魔しないようにする。引かれた1本の線に含まれているものの多さよ!

人形劇。人と人の間に人形がいることで発生する時空間。間違いをなぞること。はじまりも終りもあやふや、ずっと続く今の中で動き話す人形と私たち!